UTMFを完走すればUTMBは大丈夫か

UTMFまであと1ヶ月、今年のUTMBまで半年を切りました。UTMFには出たことがあるが、UTMBに今年初めて挑む人も多いのではないでしょうか。UTMFとUTMBの記録を比較しました。

UTMF 2018とUTMB 2018のリザルトを調べてみると、同姓同名が66名、そのうち53名がUTMFを完走、48名がUTMBを完走していました。両方完走したのは41人でした。

UTMBはUTMFより運動量が多い

UTMB(累積上昇量10300m)に対しUTMF(累積上昇量8000m)と、UTMBの方がはっきり厳しいです。これは記録にも表れています。

図11

両方のレースを完走した選手の記録を用い、UTMBのタイムを目的変数として、UTMFのタイムを説明変数とする線形回帰を行うと、UTMB = 0.79 * UTMF + 11(時間)となります。24時間〜46時間の範囲では、UTMBの記録はUTMFより数時間長いことになります。

UTMFのタイムが44時間以上では完走は危うい

UTMFの記録と完走率の関係を調べてみました。(UTMF各完走者に対し、UTMFの完走タイムが近しい6人を同定し、7人のUTMBの完走率を計算し示しています)

図2

X軸がUTMFのタイム、Y軸が完走率です。黒線が実際のデータ、赤線はUTMB 2018全体での完走率です。UTMFの記録が43.5時間を超えたあたりから完走率が顕著に悪くなるのがわかります。プロットには入れていませんが、UTMFを完走していない群では58%がUTMBを完走しています。

UTMFでボリュームゾーンより早い選手は問題なくUTMBを完走できそう

こちらはUTMF2018完走者全員のタイムの分布です。いわゆる「ボリュームゾーン」は43~45時間のあたりにあるのがわかります。

図1

まとめると、UTMFの「ボリュームゾーン」の中で早い方、あるいは「ボリュームゾーン」より前に行くくらいの選手なら安心してUTMBを完走できそうです。

UTMBまであと半年ですが、UTMFでボリュームゾーン、あるいはそれより後ろの選手はまず走力の改善に取り組んだ方が良さそうです。「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」や”Runner’s World Run Less, Run Faster”などを参考に構造化された練習メニューを導入してはどうでしょうか。

それに加え、UTMB固有の条件に備えるための練習メニューを提案したいと考えています。こちらは今度書きます。

Vaporfly 4% Elite Flyprint購入者を可視化

キプチョゲが履いたものと全く同じであるというVaporfly 4% Elite Flyprintが3月5日に販売され話題になりました。8万円と高価格である上に、31足限定、マラソンのタイムが速い順に購入権を得るという特殊な売り方が話題になりました。この記事にその様子が詳しく載っています。

購入者全員のタイムが載っているので可視化してみました。左に各サイズの在庫数、右にサイズごとの購入者のタイムを示しています。

購入者についていくつか興味深い観察があります。

  • 各サイズ、男性の上位者は全国的にもトップクラスの実力である(2時間10分前後)
  • 一方、さほど強い女性ランナーは来ていない(全員3時間以上)
    • 男性の方が道具にこだわる人が多いのか
  • 各サイズの男性の末尾に着目すると、サイズが大きいほど買いやすい傾向がある
    • 24, 25は在庫が少ないうえに女性と取り合いになるためか

2時間10分前後の選手でも自分でVaporfly 4%を並んで買わないといけないのに驚きました。サンプル数が少なく、特殊なイベントであるのでランニング人口について何かの考察を引き出すのは難しいのですが、男性の26cmには強者が多いように見えます